●状況の認知絵カード4
このカードでのSSTの対象は、その場面の社会的状況を、カードの裏の上部のように捉えてしてしまう傾向のある子どもたちです。
これらの子どもたちは、情報の的確な関連づけができなかったり、注意を向ける力が弱かったりするために場面の社会的状況を読み間違ってしまい、その結果として一般的ではない判断や行動をしてしまうと考えられます。その一般的ではない判断や行動は、社会の中では非社会的、反社会的なものとして批判や非難を受けることにつながっていきます。
中には、場面を読んだり、適切な判断をしたりする力はあるのに、それとは違う不適切な行動を好んで選択しようとする子もいます。そのような子は、“他の指図は受けない。〜するのは面倒。自分なんかどうなっても良い”と言った発言をするため、反抗的、厭世的、破滅的に見えます。
他者に関する事では適切な判断の力を見せるのに、自分のこととなると途端に“ともかく自分が一番。思い通りに事が進まないと不機嫌。人には厳しく自分に甘い”といった態度をとるので、傲慢・横柄に見られてしまう子もいます。
SSTの対象になるこれらの子一人ひとりの状態像が、発達起因なのか心理社会的要因なのかの判断は、ここでは求めません。原因のいかんを問わず、ソーシャルスキルの獲得に弱さがある子たちという捉え方をすることで、支援や指導のあり方が見えてくると考えます。勿論、結果的に同じような行動を見せているとしても、それぞれが違った情報の受け取りや処理をしていることへの配慮は不可欠ですが、発達障害であれ心理社会的要因であれ、認知の弱さや歪み、判断と行動の弱さといった共通項に着目するのです。
とはいえ、裏の説明文はあくまでも一般論の域を出るものではなく、すべての子が納得できるとは限りません。どうぞ一人ひとりに合わせアレンジしてお使い下さい。また、当然ながら、このカードの指導だけで、ソーシャルスキルが身に付くわけではありません。この絵カードのような場面での誤解や勘違いから結果的にトラブルを引き起こして困っている子たちが、場面理解や行動選択のヒントを得るという役割を担えればと思います。今後も、この絵カードをより実践的なものに改善していくことができるようにご意見やご要望をいただければ有り難いです。
最後になりましたが、この「状況の認知カード」の4では、十人十色なカエルの子(東京書籍)の作者である落合みどりさんに監修をお願いしました。
2006年1月5日 初版発行
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