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 楽しいお話しも沢山載せていきたいと思うこのコーナーですが、はぐくみ塾に来る子どもたちも保護者の方達も、時には「うちの子にはどうして?」「僕は何で?」と言う、とても不思議な事によく出会います。「どうしてなんだろう」「何故なんだろう」と言う疑問符がはぐくみ塾の待合室では時々話題になります。

 そんな中で、親子がたくましくなっていく姿を見せていただき、私たちの喜びになっています。

◇ ◆ ◇

「お父さん」(2005.11)

しずかにしていても
「はっはっは」と笑っていても
お父さんは、いつも家族のまん中にいる
どこへいくにも
何をするにも
だれでもみんな
お父さんに聞く
お父さんがいればみんながうれしい
お父さんさえいればみんな、安心。
(東田直樹「勇気はおいしいはず」小学館2005年より)


はぐくみ塾には
たくさんのお父さんが子どもさんと一緒に足を運んできてくださいます。
お父さんと色々お話しすると、「不便さ」や「弱さ」を持った子どもさんを、大きな懐で受容されていることがよくわかります。
その深くて広い懐の中には、いつもお母さんと子どもたちが
一緒に抱かれていることが見えてきます。

お母さんは、子育てに困って苦しいときに、
「お父さんが子どものことを解ってくれない」
「相談しても上の空…」「私一人で育てられない」
「私の気持ちを理解してくれない」「こどもを理解しようとしない」
と言った気持ちになることが良くあります。

実は私にもそんな時期がありました。
3人の子どもそれぞれに個性があり、夫の帰りを待ちわびて
学校のことやら、しつけのことなどを相談しようとするのですが
仕事に追われて深夜の帰宅、翌朝は早々と起きて通勤…。
たまの休みにゆっくり話そうとするとパソコンに向かってばかり…。
「もうまるで母子家庭同然なの…」
当時の私は良く友人にこぼしたものでした。

家族にはそれぞれに役割があって、
子どもはそこにいるだけで愛らしいし元気で良い…。
お母さんは大変大変と言いながらもにこにこして温かい…。
仕事で疲れたお父さんは、時にはごろごろしながらも
そんな母子の営みをにこにこと見守っている…。

「お父さんとお母さんは、子どもを見る視点が違うし声のかけ方も違う…。」
こんなことは、よくわかっているのだけれど…でもね、目の前にいる子どもが思うように育てられなくて、お母さんの心が苦しいときには、そばにいるお父さんから「お母さん大変だねありがとう」と言う一言を貰いたいと思っています。
お父さんも仕事がとても大変で、重ーい気分で家に帰って来た時にお母さんから一方的に不満や愚痴ばかり聞かされるのは、とても
大変です。
出来ればその場から逃げ出したい気分…。

こんな時にお互いの気持ちがぶつかって、大爆発!…になったり、お母さんが一人で怒って一人で泣いて…何となく気持ちがむしゃくしゃ…なんて事もあるでしょう。
その逆もあるかも知れません。
お互いにとても悲しい気持ちになりますね。

でも、そんなご両親のやりとりを聞いている子どもは、「自分のことで両親が言い争っている」と思って、悲しかったり苦しい気持ちになることをご存じでしたか? 

お母さん
あなたの選んだ夫であるお父さんは口べたで、思う存分に愛の言葉をあなたに伝えてくれないかも知れない。
でも冒頭でご紹介した直樹君の詩のように、気持ちが落ち着いたときにそんなお父さんの存在に気づくでしょう。
あなたの悲しい気持ちや苦しい気持ちを一番に受け止めてくれているのも、実はお父さんなのかもしれないのです。

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「この地球(ほし)にすんでいる僕の仲間たちへ」(2005.10)
〜12歳の僕が知っている自閉の世界〜

10月始めに、この本が(株)エスコアールから出版されました。
東田直樹君という養護学校中学1年生とお母さんの美紀さんが書きました。
直樹君は中学生になった今も、会話でのコミュニケーションは出来ません。
「自閉傾向」の診断を受けた彼は、昨年「自閉というぼくの世界」(エスコアール)という絵本で心の中を表現した作品を発表しました。

直樹君は、幼児期にはぐくみ塾で「筆談」に出会い、
お母さんとの心の交流が図れるようになってから、たくさんの作品を書き始めました。
私は、どの作品も読ませて貰う度に心打たれるものがありました。
「こんなに内面が豊かなのに、日々の生活はとても大変で、お母さんも直君も辛い。」
同じような生きにくさを持ちながら、周囲の理解を得ることが難しい子どもたちは、私たちの周りにあまりにもたくさんいます。私は、そばで動き回る直君の姿を見つめながら、頂いた新しい作品を読む度にぼろぼろと泣きました。そんな私の顔を黙ってじっとのぞき込む直君は「鈴木さん大丈夫?」と語りかけているようでした。

「お母さん、直君の作品をもっと世に出そう」という私に美紀さんは笑顔で、「はい、実は色々なところに出しています。」と言われました。
「ステージママ」ならぬ「応募ママ」になった美紀さん(ごめんね)と直君との二人三脚で、直樹君は色々なコンクールで認められ、賞を頂くようになりました。
彼の作品はNHK宇都宮放送局と栃木県石橋町との共催で12月にミュージカルになって発表されます。また、グリム童話大賞2年連続受賞作品が小学館から、今までに書きためてきた詩が朝日新聞社より本になって発売されました。

「この地球(ほし)にすんでいる僕の仲間たちへ」と言う本は、上記の2冊とは違います。ここでは、直樹君自身の言葉で「自閉」という自分自身を見つめて書いています。
なぜ飛び跳ねるのか、目を合わせないのか、何度も手のひらから砂を落とすのか…。
そして、そんな直樹君に美紀さんはどんな思いで寄り添い、後押しをしてきたのか…。
添付されたDVDで直君の普段を見ることが出来ます。

この本は、同じような思いの子どもたちや、そんな子どもたちの支援者である方々にきっと共感していただけるでしょう。元気な後押しが出来るかも知れません。
どうぞ、子どもさんに読んであげてください。
はぐくみ塾でも色々な感想が聞かれます。また次の機会にお伝えしますね。

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「お兄ちゃん」(2005.08.)

「あのね敏子さん…」T君のお母さんは、とても嬉しそうに夏休みの一日の出来事を話し始めました。それは、お母さんの知らないうちに大学生のお兄ちゃんが弟のT君を連れて、二人で外房の海まで遊びに行ってきたと言うことでした。

ダウン症のT君が小学生の頃、 一緒にはぐくみ塾についてきたお兄ちゃんは、「ほらTちゃんこれこれ」と言っては、そばで賢明にT君の学習を助けようとしていました。
一方では、「一緒に遊べなくてつまんない」と言ってはお母さんの心を曇らせることもありました。
T君が骨肉腫の診断で入院手術を受けてお母さんが深く沈み込んでいる時、お兄ちゃんはとても良い子で、お母さんを困らせることはありませんでした。
高校生になってから、少し不登校の期間がありました。お母さんは辛くて、ずいぶん泣きましたが、毎日登下校の送り迎えをしながらお兄ちゃんを支えました。
二人の兄弟はそれぞれの道を歩きながら成長し、お兄ちゃんは20歳、弟は17歳になりました。
今お兄ちゃんは、大学とバイトの毎日で兄弟の時間帯はすれ違い気味です。お母さんは自立してきたお兄ちゃんをまぶしく思いながら見ていました。
 
今年の夏休みに、お兄ちゃんは気軽に弟をドライブに誘いました。
後でお母さんに聞かれた時に「たまたまバイトも休みだし、Tに『行くか?』と聞いたら『うん』と言ったから。」と答えたそうです。
お兄ちゃんは、初めに行こうとした「勝浦海中公園」で、階段をかなり歩かないと下まで下りることが出来ない(T君の片足は義足です)と言うことを知り、あきらめて近くの砂浜で遊んだことや、T君がご機嫌で楽しめたことをお母さんに話しました。
お母さんは「こんな日が来るんですね。びっくりするやら嬉しいやら…。」「二人で何を話したんでしょうね…」と嬉しそう…。
 
「お兄ちゃんと男二人でドライブかー。良いねー。頼もしいねー。」と言う私に、T君は「うん」と満面の笑顔で答えてくれました。

先日の朝、NHKで30歳を過ぎた自閉症の方の番組がありました。
その中で印象的だったのは、インタビューに答えた弟さんが「別に、兄弟ですから特別なことはありません、ちょっと変わってるってことぐらいですかね…」と静かな口調で語られていたことでした。

兄弟は良いね。
だってお母さんを困らせて心配させて…その姿をお互いに見ながら一緒に育っていくんだから…。


「大好きなこと」(2005.08.)

夏休みの大好きなこと
それは、プールで泳ぐことです。
6年生のN君の家のそばには、大きな公設のプールがあります。
発達障害のN君は、このシーズンが来るのを待っていました。
今の季節だけしか経験できない波のプール、流れるプール
…そしてウオータースライダープールを満喫できるからです。
小中学生ならみんな、このダイナミックな水遊びを楽しむのが
プールに行く目的にもなっていますよね。

ところが、わくわくしながら階段を上がろうとしたそのときに
監視の人から声をかけられました。
「障害のある方は、許可できません」…。
「もし万が一事故を起こした場合責任が持てません」…。
(この言葉…どこかで何度も耳にしてきた言葉です。)

「えっ?」そばにいたお母さんは耳を疑いました…。
「規則ですので」…。
「だって去年までは、何の問題もなく滑って遊んでいたんですよ」
「突然だめと言われても…」「障害児だからだめというのはおかしくありませんか?」

納得のいかないお母さんと、引率してくれたボランティアさん達は憤慨しました。
何の説明もなく突然ストップをかけられたこと、状況判断もせずにただ「障害がある」という理由で拒まれたことについては、やはりどう考えても理解できません。
「悔しいやら」「腹立たしいやら」…。
お母さんはため込んだ気持ちを一気に吐き出しました。

私は、涙ながらに話されるお母さんの思いを受け止めながら
「今の時代にまだこんなことが平然と行われる」ことを知り、愕然としました。
「障害のある方」という言葉はとても優しく聞こえます。
でもいったい何が悪いのでしょうか?
とても悲しいことは、プールの管理者は「障害児=危険」というようにとらえて、社員に徹底させていたことです。

去年のようにスライダープールで滑り降りる醍醐味を楽しみにしていたN君の気持ちはどうすればいいのでしょうか?
傷ついたお母さんの気持ちは、いつ晴れるのでしょうか?

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